優秀なる羊たち 米国エリート教育の失敗に学ぶ

この本の著者、ウィリアム・デレズウィッツはコロンビア大学を卒業し、イェール大学の教授も務めた人物です。

アメリカのエリート中のエリートである彼が、20歳の頃の彼自身に向けて、当時知りたかったこと(例えば、「大学へ行く意味は何か」とか)を書いたのがこの本です。

かといって、日本の私たちに関係がないわけではありません。日本の教育システムはアメリカの二番煎じをしているといっても過言ではなく、近年、人物重視の入試が増えているようにその傾向はますます強くなる一方です。

ところで、アメリカで人物重視の入試が取り入れられた理由を知っていますか。名目上は多様性を生み出すことですが、実際には、ペーパーテストのみではユダヤ系の入学者が多くを占めていることに対する措置だったようです。完全に差別ですね。

米国のエリートたちは敷かれたレールに沿って学業を収め、システムの中で動くことには長けているが、疑問を持ったり変革を起こしたりすることはできない、と評されています。これは、日本においても同じではないでしょうか。

豊かな家に生まれ、努力で学歴を勝ち取ったかのように感じているエリートと、貧しい家に生まれ、機会を十分に与えられなかった人々。この両者の隔絶は日本でも確かに見られるものです。

著者はこのようなシステムを変えること(スポーツ組及びレガシー組の廃止、階級に基づくアファーマティブアクション)を訴えています。

また、大学の選び方や目紛しく変化する世界において人文科学を学ぶことの重要性についても触れています。

エリート意識のある人には勿論、ない人にも、大学を選ぼうとしている高校生にも、ぜひ読んでほしい一冊です。